恋のパレード

君だけを愛していたい -8-

 部屋に入ったのとほぼ同時に。

「失礼しますね」

 その言葉に反応する前に、自分の体がふわりと浮いた。
 何事かと視線を彷徨わせると、耳元で彼が囁く。

「動くと危ないですよ」

 やんわりと制され、先生の首元にしがみついた。
 彼の吐息を近くに感じる。
 横抱きされるのはやっぱり慣れないけど、こうして密着できるのは嬉しくて。
 久しぶりの感覚に回した腕に力が入ってしまう。
 それは自分から求めているみたいで。
 一度意識してしまうと、高速で顔が火照っていくのが分かった。
 今の救いは部屋の電気が消えていること。
 とはいえ暗闇の中、先生の足取りはおそろしく確かなもので。

「せ、先生……?」

 どこへ行くのだろうと不安感から声を出すと、彼の足が止まった。
 背中が優しい感触に包まれる。
 そっと降ろされのはリビングのソファ。
 あたしがそれに気づけたのは、開いたカーテンから差しこむ月明かりのおかげで。
 部屋を淡く包む光が、ふと先生の顔を照らし出す。
 見つめ合うこと数秒。

「……ん……んん」

 惹かれ合うようにして唇が重なる。
 何度も離れては距離を縮めてを繰り返し、やがて口の端から雫が溢れる。
 濃厚な口づけから解放されると、絡め取られた舌先から糸が引いた。
 先生の指先が、愛おしむようにあたしの唇をゆっくりとなぞり、唾液を拭った。

「大人気ないとは分かってはいるんです」
「……先生?」
「奈江は俺のために黙っていたんでしょう? 傷つけないために。……ですが、やはり奈江を彼に独占されていたのは面白くありません」
「えっ……あの、ちょっ……」

 剥ぐように服がはだけて、先生が覆いかぶさってくる。
 唇と指先が肌を這い、時折痛みを含ませながら熱を刻んでいく。
 やわやわと胸を揉まれながら、鎖骨から脇、鳩尾へキスの雨が降る。

「ぁん、ぅ……」
「男の嫉妬なんて見苦しいと思って我慢してきましたが、俺以外を見て欲しくない」
「……はっ……ふ、あぁ……っ」

 胸の蕾をきつく吸い上げられたかと思えば、下着越しに体の中心をなぞられて。
 そこは彼の愛撫で既に潤いきっていた。
 焦らすように指が往復し、やがて下着の隙間から指が中に入ってくる。
 途端、湿った音が耳を撫でる。

「あッ……せんせ……!」
「だから、今夜は俺だけの証をつけてもいいですか……?」

 薄明かりで照らされた先生の表情は、艶かしくて。
 思わず喉が鳴る。
 と不意に、熱を帯びた固い感触が膝に当たり一瞬、意識がそっちに逸れた。

「ひゃあ! あぁん……っ」

 油断をしたのがいけなかった。
 中を掻き回していた指が敏感な場所を擦るように往復し、びくん、と体が跳ねた。
 体から余計な力が抜けきり、ふわふわとした感覚に包まれる。
 ぐったりしていると、何かの封を切るような音がして。

「奈江」 
「ふう……んっ……ん」

 唾液が混じるほど唇をこじ開けられて。
 貪るようなキスに、わずかに残った理性すら奪われていく。
 胸を下から持ちあげるようにして、先生の大きな手の感触を感じる。
 こねるような手つきから大胆に揉まれたかと思えば、かぷりと突起を甘噛みされた。
 そこはもう、熟れた果実みたい腫れていて。
 舌先で強い刺激を与えられるたび、声のボリューム調整さえできなくなる。

「……ふぁ、……やぁんっ……ぁッ、んああ!」
「力は抜いていてくださいね」

 気遣うような声とは裏腹に、強引に先生自身が中に入ってくる。
 入り口をこじ開けられ、ぐぐっと押しこまれた。

「……ひゃんっ……ッ……あ、あああ……ッ」

 裂けるような痛みが襲う。
 奥へと到達すると、先生が一旦動きを止めた。
 そして汗で顔に張りついたあたしの髪を払いのけ、顔を覗きこむ。

「すみません、痛いですよね。……大丈夫ですか?」

 正直、全然大丈夫ではなくて。
 彼が動くごとに眉間に皺を寄せるぐらい、じわじわと痛みが来るから。
 けれど心配そうに言われると、本当のことは言えなくて。

「だ……大丈夫です」
「そうですか?」

 こくりと頷くと、先生はもどかしいぐらいの速度で動き出す。
 でもそれは、始めの数分だけで。

「……んっ……ッ……あ、あ、ああっ!」
「っ……奈江が悪いんですよ……」
「……くぅ……ゃあっ、ふぅぅ……せ、ん……せ?」
「そんな顔で……煽るから……っ」

 学校で見せる教師の彼とは違う、余裕のない声がした後。
 激しい律動が刻まれ、一気に高みへ誘われる。
 奥を突く動きが加速するに従い、意識が混濁していくのが分かる。
 でも、それを止める手段はなくて。

「あ、あ、あああ……ッ!」

 強く腰を掴まれ、さらに引き寄せられる。
 そのせいで先生の感触がより際立ち、いつもより圧迫する存在感に遅れて気づく。
 蕩けそうなほど熱く、脳を揺さぶるほどの衝動。
 それらを全身で受け止めながら、いつしか意識の糸は途切れていた。